あとがき

 県史シリーズの旧版『静岡県の歴史』が刊行されたのは1970(昭和四十五)年のことであったから、すでに30年近くもたってしまった。 その後、静岡新聞社による時代別の『静岡県の歴史』が企画され、七八年に中世編、七九年に近代・現代編、八三年に近世編が刊行されたが、原始・古代編はついに刊行されず、未完のままで終わってしまった。 それからでも、すでに20年ほどになる。

 この間、静岡県における歴史研究は大いに発展した。研究面では七〇年代後半に静岡県近代史研究会と静岡県地域史研究会とが相次いで発足したことの意義が大きい。

 他方、県下全般にわたる資料の発掘・調査の面では、とくに八五年から始まった『静岡県史』の編纂事業の成果がやはり特筆されるべきである。 編纂事業自体は、当初の予定どおり13年かけてこの三月に終了するが、通史編七巻、資料編二五巻、別編三巻、全三五巻におよぶ成果は、質量ともに充実していて、今後の研究にとって確かな基礎が据えられたといってよいだろう。

 また、この県史編纂事業が刺激になって、市町村史の編纂がそれまで以上に盛んになったことも注目される。 市町村史では、県史以上によりきめ細かな調査や叙述が可能となり、歴史研究の裾野を大きく広げることになった。

 このように、この20年ほどの間に、静岡県の歴史研究の条件は格段に向上したのである。

 その意味で、今回の新版児史シリーズは、静岡県にとってはまことにタイミングのよい時期の企画となった。 本書の執筆にあたっては、通史編の一部が間に合わなかったとはいえ、鼎史編纂の成果に全面的に依拠している。 また、近年の市町村史の成果も大いに参照した。『静岡県史』では、当初別編3は「概説静岡県史」の予定であったが、その後「図説静岡県史」に変更になった。 概説の刊行はなくなったため、本書ははからずも、「概説静岡県史」の役割を果たすことになったともいえよう。

 本書編集の要請をうけた私は、大まかな編成案を作成するとともに、執筆者としては、専門委員などとして県史編纂に携わった方々にお願いした。

 本書の執筆分担は、第一章荒木敏夫氏、第二章杉橋隆夫氏、第六章山本義彦氏で、序章および第三〜五章は本多が担当した。 付録についても、それぞれ時代別に分担した年表と参考文献以外は、いずれも本多がとりまとめた。 なお、近・現代の叙述が簡略になっているのは、先年山川出版社より『静岡県の百年』が刊行されているためである。

 執筆にあたっては、私たちは章・節のタイトルや取りあげるべき内容についても、若干の意見交換を行った。 また、先に述べたような最新の諸成果を、できるだけ採り入れるように努めた。 しかしながら、限られた紙数のなかでは、どうしても触れられなかった問題も多く、あるいは評価の違いなどもあるかもしれない。

 そのような限界はあっても、本書には、私たちの立場からする最新の静岡県の歴史像が描かれていることは確かである。

 最後に、著書・論文などを参照させていただいた方々、県史や市町村史の編纂に努力された方々に心からお礼を申し上げたい。 また、山川出版社編集部の本書担当者には、行き届いたご配慮をいただいた。 あわせてお礼を申し上げる次第である。

          一九九八年三月                                      本多 隆成

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